脳細胞の死滅を阻止できる?

人間の脳細胞は約140億個もあるといわれています。これが20歳くらいから毎日のように約10万個ずつ失われる仕組みになっています。人間の体を構成している細胞のほとんどは新陳代謝し、いったん死滅しても再生される細胞なのですが、脳脂肪と心筋細胞だけは再生されない細胞なので、できるだけ失わないように、大事に使いたい細胞です。

 

 

■脳の生理的な老化

 

脳細胞は約10歳くらいまでに形成され、以降、再生されることはありません。20歳くらいになると、逆の毎日のように死滅していきます。しかし、膨大な数の脳細胞のなかで実際に使っているのは30億個程度。残りの使われないままになっている脳細胞は、毎日、死滅する脳細胞をカバーするように働きます。

ある細胞が死滅すると、その周囲にある別の細胞が入れ代わって瞬時に回路をつなぐため、生理的な死滅があっても、ほとんど支障はないものです。

しかし、加齢とともに死滅した脳細胞は加算され、残りが少なくなってきます。すると死滅した脳細胞の回路をつなぐための代わりものが見つけにくくなります。そうなると物忘れが激しくなったり、判断の確定ができないままに不安になったりします。

したがって、高齢になると新しい記憶が薄れ、古い記憶ばかりを正確に思い出すという現象がおこってきます。

これが、老化の物忘れのメカニズムです。こうした生理的な脳細胞の減少に対して私たちは何の対策もたてられないのでしょうか。

人間の脳は、よくコンピュータに例えられますが、コンピュータが人間の脳に似せて作られたのであり、本来、人間の脳とコンピュータとは比較にならないほど性能がちがいます。コンピュータは人間が指示を出さなければ作動しませんが、人間の脳は、指示を与える働きもすれば、指示を受けて機能することもできるはずです。

 

■脳細胞の助け合い

 

脳細胞は生理的に死滅し、再生しない細胞であることは間違いありません。生理的なことなのですから、死滅そのものをくい止めることはできません。しかし、いかに死滅しても何のダメージもなく、同じように脳の機能が働くならば、それは死滅しないのと同じことではないでしょうか。

脳の神経細胞は、単独で働いているわけではありません。細胞同士がネットワーク機構をつくっています。脳細胞はたこの足のような形をしています。そしてその脳細胞からは繊維体が約1000~2000出ており、シナプスと呼ばれる接合部でつながっています。そのため、脳神経繊維細胞と呼ばれています。 ひとつの細胞が死滅すると、繊維細胞が伸びて、周囲にある恰好の脳細胞に接合し、あたらしいネットワークができあがります。

このネットワークには、使用頻度の高いものと、そのネットワークを補助するものとがあり、重要なネットワークが壊れると、補助のネットワークが作動して助けるようになっています。重要なネットワクであればあるほど、何重にも補助のネットワークで守られ、機能を果たすために集合して守っているのです。

たとえば、脳が何らかの障害を受けて、常に使っているネットワークが使えなくなったとき、脳は決してあきらめずに、かならず補助の回路を使って新しいネットワークを組みます。

この補助のネットワークをふだんから使用している人は、物忘れが少なく済みます。

ところが、新しく組み込まれたネットワークが、以前のネットワークと同様に働くためには、ちょっとした時間が必要です。その間伝達できる情報に質や量には多少の誤差があるかもしれません。しかし、使い続ければやがて元の通りに、何の支障もなく使えるようになります。

 

■使い続ける努力がカギ

 

脳細胞は生理的に欠損しても、他の脳細胞がカバーし、新しいシステムに変換することは可能なのです。ただし、そのシステムを使いこなすまでには、しばらくは機能低下もあれば、機能停止することもあるかもしれません。しかし、時間さえあれば、ネットワークの回復は十分に可能なのです。

問題になってくるのは、死滅した脳細胞の回路を補修し、新しいネットワークをつくるだけの時間的余裕があるかどうかです。

情報化社会である現代にあっては、瞬時の休みもなく情報が流れ込んできます。修復の時間も十分にはとれません。そうなると、新しいシステムは不安定のままに作動することを余儀なくされます。

そうなると、情報を正しく分析できなくなり、物忘れが激しくなったり、覚えが悪くなったり、判断の確定ができずにイライラしてストレスを抱え込むことになってしまいます。

そんなことが度重なると、年齢のせいにして、あきらめてしまったり、使いことを放棄してしまいたくなるかもしれません。

しかし、多少イライラしても、くやしくても、使い続けることが脳細胞を活用する秘訣です。十分な休養をとり、修復の時間をまちながら、決してあきらめることなく、使い続ける努力が、生理的な死滅に対抗する唯一にして最良の方法といえるのではないでしょうか。

 

 

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