医療生毛植毛が「毛」の悩みを抜本的に解消

 なんらかの因子によって毛が薄くなってしまい、今までと同じような毛が生え、二度と薄毛にならないような方法はないものか、と模索したところでたどり着くのが「医療植毛の技術」だ。植毛の歴史は古く、今に始まった施術ではないが、現代医療の長足の進歩とともに、誰でもが手の届く治療法として再認識されている。医療というように、これまでのような薬品会社や美容関係の企業が扱うことのできない医療行為であり、抜本的な外科治療になる。

■養毛・育毛
 昭和初期から髪の毛が薄くなってくると、養毛トニックをふりかけ、頭皮をマッサージする男性が多くなっていた。頭皮を刺激することにより血行をよくすれば、髪の毛が生えないまでも養生することができるという発想だ。いつしか養毛は育毛に名を変えると同時に、もっと一歩積極的に毛を太くたくましく育てるという意味が込められた。

■発毛
 しかし、どんなに養毛、育毛剤で手当をしても、その結果にあまり変わりはない。そこで、どうせ手入れしても抜け落ちる毛髪ならば、いっそ抜けないように発毛を促す薬剤を用いれば……という発想で開発されたのが発毛剤。毛の成長を促す毛根組織を刺激し、血行をよくするなどの方法論を講じてなんとか成長させようとするものだ。しかし、夢の“毛生え薬”もその結果はイマイチ。それでもまだ、発毛市場はにぎやかで、毛根組織を再生しようという研究がさかんに行われている。

■増毛
 もうひとつの方法が増毛。1本の自分の毛に複数の人工毛髪を結びつけたり埋め込んだりして増やす方法。しかし自分の毛は伸びるので、結びつけた毛もいっしょに伸びて結び目の位置変更がおこる。不自然になるため、常にメンテナンスが必要になる。

■医療植毛について
 ひと口に植毛といっても、それにはふた通りがある。ナイロンや塩化ビニル、あるいは誰のものかわからない人毛などを、自分の毛の間に植えつける人工毛植毛と、自分の毛を自分の薄毛の部分に移植する生毛植毛だ。いずれであっても、植毛は皮膚への直接の施術だから、医療行為であり、それゆえ医療植毛という。
●人工毛植毛
 人工毛移植とは、ナイロン、塩化ビニル、あるいは誰の毛かわからない人毛を皮膚に植えつける方法。これらのものを皮膚に直接植えつけると、皮膚は当然異物を排除しようとする生体反応をおこす。この異物反応によって、植えつけた部分が赤く腫れ上がったり、細菌が入り込んで膿んでしまったりする。そしていずれ抜け落ちてしまうが、そのあとの皮膚は、ガサガサとして硬くなり、穴があいたようになることもある。また「人工毛の寿命は2年」といわれるように、抜け落ちてしまうことから施術を繰り返さなければならず、その費用も膨大なものになる。しかし、異物反応を起こさない人工毛の開発も研究されているので、そうした物質が開発されれば、患者側のダメージも半分になるし、医師の手間や技術も大幅にカットされることになり、まさに医療植毛革命といえる事態がおこるのではないか、と期待されている。
●生毛(自毛)植毛
 自分の毛を自分の薄毛の部分に植えつける……自分の毛だから異物反応はおこらない。安全に増毛することが可能。とはいえ、そうでなくても薄くなり、少なくなっている毛髪だから、いったいどこの毛をとって薄毛になっている部分に移植するのだろうか。髪の毛の絶対量が変わらないならば、薄毛である場所の移動に過ぎないではないか……と思われる方のために、ここでは基本的な概念を先取りしよう。

■植毛……医療生毛植毛で薄毛を解消する原理
1.自分の毛を移植する
 移植する自分の毛を「ドナー」という。解消したいと思っている薄毛の部位の大きさや手術法によってドナーの本数は違うが、通常、後頭部の耳から耳を結ぶライン上に、幅約1センチ、横の長さ約6~10センチ(移植する本数によって傷の横の長さが変わる)の横辺を三角形に尖った形で頭髪ごと皮膚を切り取る。切り離されたドナーは、それぞれの手術法にふさわしい大きさに切り分け(株分け)られ、特殊な器具を使って手早く移植される。
2.切り取った後はまったく目立たない
 ドナーをとった後頭部は、ていねいに縫い縮められるので、約6センチの傷が一直線に残るだけで、その上から髪の毛がかぶさることから、まったく人目につかない。
3.移植した毛はいったん抜け落ちる
 移植した毛は、生着するといったん抜け落ちる。これは正常な毛周期による休止期に入ったことを意味し、しっかり休んで栄養をため込み、次に生えてくるときの準備期に入る。ただし、素早く血管がつながり、養分の補給が行われた毛については、そのまま抜けずに成長するものもある。それを可能にする率はドナー採取から移植までのスピードと相関するといわれている。
4.自然の毛と同じサイクルでよみがえる
 6カ月ほどして毛根が成長期になると、毛が成長しはじめる。その後も毛周期にしたがって、ほかの毛と同様に抜け落ちたり生えたりを自然に繰り返す。
5.二度と薄毛にならない原理
 いったん移植した部分が再度脱毛することはめったにない。それは「頭髪は生えている部分によって支配されているホルモンに違いがあること」と「最初からもっていたドナーの性質を移植後も持ち続ける」という2つの原理による。後頭部や側頭部に生えている毛はもともと脱毛しにくく、そこからとったドナーの性質は移植後も持続することから、再度脱毛することはない。

■植毛後進国・日本からの脱出
 医療植毛という発想は、実は今にはじまったわけではない。19世紀末からすでに行われており、20世紀になると脱毛治療の先進国アメリカでは、すでに20万近くの人が施術を受け、1998年には100万人を突破している。日本がなぜ植毛において後進国になってしまったのか、については、民族的な考え方やあまりにも高価だったこと、施術に長時間を要したこと、などが考えられるが、そのなかのひとつに技術的なものがあったことも事実。
●ドナーの株分けに時間がかかった
 採取したドナーを株分けするときに、時間をかけるとその分新鮮さを失い、死んでしまう率が多くなる。当然、生着率が低くなり、患者にとっても医師にとってもつらく大変な作業だった。最近になって、植毛の方法や器具類が開発され、その悩みは解消されることになった。
●成長関与部分だけの移植では生着率が低い
 以前は、ドナーを採取するときに、髪の毛の根もとにある毛乳部や毛球部があれば、移植しても生着すると考えられていたが、実はそうではなく、毛乳頭や毛包の働きを誘導する周辺組織がすべてそろっていないと、なかなか自然の毛周期をたどって成長することにはならない。実は、今でもそのあたりのところは定かではなく、発毛には立毛筋の細胞のなかに存在する幹細胞のなかの発毛遺伝子が関与しているのではないか、といわれている。これまで、日本では毛乳頭や毛球部が残っていれば生着するということが常識になっていたことから、生着率に約70%にとどまっていた。
●植毛技術は97%の生着率を可能に
 これまでの医療植毛の難点を見事に克服したのが、高須クリニックのニードル法。生着するすべてのものをそっくりそのまま含んだ状態で植毛する方法で行うので、現在97%という生着率を誇っている。また、1本の毛髪をいくつにも切りわけ、発毛状態の実験もニードル法だから行える手法であり、ドナーを無駄なく植毛することを可能にしている。

■これだけある植毛の手法
●フラップ法
 今はほとんど行われていない移植法。フラップとは帯状のドナーのことで、これを一定の面積をまとめて移植する方法だ。側頭部の髪を細長く切り離すが、一辺だけを残しておき、その状態で薄毛になっている部分まで伸ばして移植。一辺が元あったところにつながっていることから、血管をつないだまま移植することが可能なため、生着率は非常に高くなる。一回で広範囲の移植が可能だが、その分、負担も大きく、縫合部分の傷が目立つこともあるので、信頼できるクリニックで行うことが大事。
●パンチ式植毛
 まるで書類にパンチをして穴をあけるように、後頭部からドナーを採取し、移植する前頭部にも穴をあけて10本前後の髪の毛を田植え式に植毛する。まず後頭部や側頭部からパンチで採取するドナーは直径5ミリくらい。これを薄毛の部分に1株ずつ植えつける。頭皮には凹凸ができるので、その周辺が薄毛になったときに傷跡が目立つ。もっともポピュラーな植毛法で、アメリカでは年間150万人が手術をしたといわれ、こうした悩みを抱える人は、約1000万人にのぼると考えられている。この方法も今ではほとんど行われていない。
●マイクロ式植毛
 パンチ式植毛の改良版。パンチ式のドナーは最初5ミリだった。そのあと3~4ミリになったが、これをさらに小さな穴にするためにドリルで穴をあける。約2ミリの穴をあけるものをハーフ、約1ミリ程度のものをクオーター、さらに小さい穴もある。小さくなればなるほど、微妙な髪の流れを再現でき、より自然の流れに近づき、生着率も高くなる。
●スリット法
 頭皮に小さな傷をつけ、そこに毛穴を共有する毛根のひとつの束を植えてくる。ひとつの毛根ユニットから1本の毛が生えているもの、2本、3本のものとあるが、とにかく1毛根ユニットごとに移植していく方法で、株分けが勝負。生きている細胞を弱らせることがないように手早く、確実に株分けされる。小さいとはいえ、切ることから出血があり、その止血のために傷口を圧迫しなければならない。手術後ベルトを巻いて圧迫することから、毛の向きが後ろに流れることになり、オールバックの髪形になってしまう。また、どんなに小さいとはいえ、切り込みは隣の毛穴にも及ぶため、植毛できるのは半分になってしまう。
●ニードル法
 注射器のような特殊な器具を使って1本ずつ植毛する。注射針は直径が0.6ミリ、内径が0.4ミリなので、この器具に装着する株分けしたドナーをつくることにハイテクニックを要する。また、移植にあたっては、皮膚組織の深さには個人差があるので、ハンドメイドで植えつけるときの正確さとスピードのために注射針のストッパーをその人にふさわしく調整。傷跡はまったくわからず、出血もない。

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