ボケ予防学

最近、どうももの忘れが激しい……もしかしたら痴呆かもしれない、などといった不安は誰もが感じるものです。体が老化すると同様に、当然、脳も老化します。その老化が物忘れを引き起こしているならば、生理的なものですから、ある程度はしかたないのかもしれません。だからといって周囲に迷惑を及ぼすようになれば問題。もっとも問題になってくるのが病的な痴呆です。誰もが不安に思っていながら、誰もが予防対策を講じていない痴呆に対して、今のうちから予防に取り組んでみませんか。

 

 

■老化による生理的なボケ状態

老いたゾウは、自分の死期が近づくと、群れから離れて誰にも気づかれることなく墓場に向かい、ひっそりとその命を終えるといいます。しかし、どうもできすぎた話で、高等動物になればなるほど、死期が近づくにつれ見当識障害おこすといわれていますから、ゾウももしかしたら見当識障害によって群れについて行けなくなったのかもしれません。

見当識障害とは、いわゆるボケのことで、自分が今、どこで、何をしているか、相手はもとより、自分が誰なのかすらもわからなくなったしまうことをいいます。

高等動物にあっては、すべての動物に大なり小なり起こることであることから考えてもボケは神が与えてくれた贈り物ともいえるのではないでしょうか。

死が動物に与えられた克服できない宿命である以上、ボケは死の恐怖をできるだけ取り除くためのひとつの方策なのかもしれません。

とはいえ、たとえそれが神の贈り物だとしても、周囲に迷惑をかけるほどにボケたくはないという思いも当然です。周囲の迷惑をかけず、死への恐怖も緩和しくれる程度のボケに止めることはできないものでしょうか。

 

■とにかくあきらめずに頭を使おう

生理的な痴呆はシニリティと呼ばれ、いわゆる老衰によっておこるもの。簡単にいってしまえば、体が老化するように、脳も老化するためにおこる痴呆です。

脳の老化とは、簡単に言ってしまえば、脳細胞の死滅です。脳細胞は約10歳くらいまでに形成され、以降、再生されることはありません。20歳くらいになると、逆に毎日のように死滅していきます。ただし、人間の脳細胞は約140億個もあり、そのなかで実際に使っているのは30億個程度。使っているのが4分の1以下なのですから、多少死滅してもほとんど影響はありません。しかも、使っている脳細胞が死滅したときには、使われていない脳細胞が瞬時に代役を果たすようなシステムになっています。つまり、脳細胞とは単独に働いているのではなく、細胞同士がネットワークをつくっており、そのネットワークのなかのひとつの細胞が死滅すると、周囲にある恰好の脳細胞が接合し、新たなネットワークをつくるようになっているのです。さらに使用頻度の高い、重要な機能を果たしているネットワークは、補助のネットワークで何重にもガードされていますから、たとえ脳が何らかの障害を受けて重要なネットワークが使えなくなったにしても、補助のネットワークを使って修復することは可能なのです。

ところが、加齢にしたがって、脳細胞自身も減ってきますし、若いうちは瞬時に代役が見つかったものが、次第に見つけにくくもなってきます。そのために、脳細胞のネットワークが正常に働くまでの時間、伝達できる情報の質や量には多少の誤差が生じてきます。それが、物忘れや物覚えが悪い、瞬時に判断の確定ができなくなったりという状態を引きおこすことになります。こうしたことが続くと年齢のせいにしてあきらめてしまったり、使うことを放棄してしまったりしがち。その間、多少イライラもするでしょうし、くやしくも思うかもしれませんが、時間さえあれば新しいネットワークを使用することが可能なのですから、決してあきらめずに、頭を使い続けてください。その努力こそがネットワーク機能を高め、生理的なボケの進行をくい止めます。

 

■脳卒中の予防イコールボケ予防

 

病的な痴呆には、2種類あり、ひとつはアルツハイマー型痴呆、もうひとつは脳血管性痴呆です。問題になっているのは前者。1906年、オーストリアの学者、アルツハイマー博士が高度な痴呆をおこして死亡した51歳の女性患者の報告をしたことから、初老期の痴呆に対してこの病名がつけられました。

最初は、初老期におこる痴呆に対する病名でしたが、老年期の痴呆も脳の解剖所見から同じ病気であることが認められ、近年では、全部をまとめてアルツハイマー型痴呆とよばれています。このアルツハイマー型痴呆とは脳の細胞が次第に死滅していく病気です。なぜ死滅していくのかについては、現在でも不明であり、そのために決定的な治療法もありません。したがって、予防法もないのです。アルツハイマー型の痴呆になったらと恐れても、解決法はないのですから、むやむに恐れてもしかたがないともいえます。

ただし、医学の進歩によって、どうやら進行を止めることはできるようになったといわれているので早期発見早期治療によって乗り越えられるようになるかもしません。

もうひとつの脳血管性痴呆は、脳梗塞や脳出血などの脳卒中の発作の結果、生じる痴呆です。脳は大量の酸素や栄養素を必要とする器官ですから、脳卒中によって脳の血管が詰まったり、硬化したりすれば、脳への酸素や栄養素が届かなくなり、結果、脳細胞が死滅することになります。したがって、予防は脳卒中をおこさないようにすることが第一。それが予防できれば、脳血管性痴呆は確実に予防できるのです。

高血圧、肥満などの成人病を治療し、ストレスをため込まない、規則正しい生活、栄養のバランスのとれた食事、適度な運動を心がけることによって、病的な痴呆の半分は予防できるのです。しかも、日本においては、アルツハイマー型は少なく、脳血管性が大部分を占めていますから、脳卒中を予防すれば、そのまま痴呆への予防にもつながります。

 

 

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