かぜをこじらせると合併症をおこす

「かぜは万病のもと」……といいますが、その意味には2つあり、ひとつは抵抗力が落ちているところにかぜをひき、それによってより一層体力を低下させ、数々の合併症を引き起こしてしまうという意味。そして、もうひとつには、かぜと同じような症状から始まるかぜ以外の病気が多いから、かぜだとして安易に片づけるな、考えるな、という意味です。たとえ単なるかぜの症状でも、それは体力低下のサイン。引き始めの養生が大事です。

■こじらせるとは処置を誤り悪化させること
 かぜをこじらせる……この“こじらせる”とは、無理したり処置を誤ったりして病状を悪くすることをいいます。かぜは怠け病だ、多少のかぜくらいで学校を休んだり、仕事を休んだりしてはいけないと、親や先生、先輩、上司などに、いわれた記憶はありませんか。それもあってか、現実的にはたいていの人は、「かぜをひいてしまって……」といいつつ、発熱があって、よほど苦しくなければ、無理して通常どおりに生活してしまいます。それでも、自然に治ってしまうことがほとんどかもしれません。しかし、たまたま運が悪く、徹夜続きの仕事があったり、受験勉強の追い込みだったり、ひどく大きなストレスに身心ともに疲れ果てていたりすると、いつもはふつうに行動していても治っていたかぜが、そのときばかりは……ということがおこります。普通感冒の場合には、上気道感染です。そのため、症状はクシャミ、鼻水、鼻づまりに始まり、のどの痛み、そして発熱と続きます。ウイルスが咽頭まで侵入して止まっている場合には、症状はここまで。普通感冒のほとんどはこの症状で終わります。
■こうなったら合併症を疑おう
 普通のかぜで発熱すると、37℃台の熱が3~4日続きます。なかに38度台の日があっても1日程度。それ以上高熱になることはほとんどありません。ところが、3~4日たっても熱が下がらず、逆に高くなってきたり、いったん下がった熱が1日くらいしてまた上がり、前よりも高くなったときには、もう単なる普通感冒の域ではなく、合併症を疑う必要があります。咽頭で止まっていたウイルスが、気管支のなかまで侵入すると、咳が出始め、たんがからむようになります。これはウイルスが気管支で炎症をおこし、もうすでに「気管支炎」という合併症になっています。この気管支炎にさらに、口中などに常にいる細菌が感染すると、二次感染の気管支炎になり、症状はさらに悪化します。そのまま放置していると、ウイルスは肺にまで侵入します。そしてウイルス性の肺炎をおこすことになります。ただし、かぜのウイルスはさほど強いものではなく、通常では気管支の防御作用によって肺にまで到達することはありません。問題なのは、防御作用が弱くなることにより、常在菌が病原体として活動し始めることによっておこる二次性の肺炎です。この原因菌には、肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌などがあります。常在菌は、若い人からお年寄りまで、誰のなかにも存在していますが、お年寄りの場合には、とくに飲み込むときの咽頭反射が弱く、食べ物を気道に入れやすくなり、常在菌もいっしょに肺に入ってしまうため、より肺炎になりやすいのです。かぜの原因になっているウイルスも、肺炎をおこす細菌も、決して特殊なものではなく、常に存在しているものです。にもかかわらず、健康時には病原体としてまったく作用しません。ところが、寒さや過労、睡眠不足などによって防衛力が低下すると、ウイルスや細菌の力のほうが上回り、病原体となって症状を現すことになります。
■免疫力を高めることがかぜ対策のポイント
 普通感冒なのに、あるときはひどく、またあるときは軽くすむことがあります。それはウイルスの強さというよりも、その人の防御作用である免疫力の差です。免疫力が強ければ、ウイルスの毒性は弱まり、逆に免疫力が弱っていれば、ウイルスの毒性は強くなります。つまり、かぜを重症化させるか、簡単に治してしまうかは、そのときの免疫力の差ということができるでしょう。たとえインフルンザウイルスのように強いものに感染したにしても、防御作用が強い場合には、症状を現さず、感染したことにすら気づかないこともあります。したがって、かぜのキーポイントは免疫力。免疫力さえ十分に働いてれば、侵入してきたかぜのウイルスを簡単に退治できてしまいますし、もちろん重症化も防げます。体の防衛作用、免疫力を強めるためには、十分な栄養と休養が必要です。過労を避け、バランスのよい食事を規則正しく摂取し、十分に睡眠をとりましょう。また、ウイルスは低温乾燥を好みます。高い温度と湿度のところでは活発に働くことができないので、できるだけ温かくし、乾燥を防ぐことが基本です。がんの手術や治療中、治療後の人、糖尿病の人、呼吸器疾患のある人の場合には、すでに免疫力が低下しているので、重症化しやすいため十分に注意してください。また、お年寄り、乳幼児も免疫力が十分ではありません。かぜが重症化しやすいハイリスクグループには、65歳以上の人、老人福祉施設、老人医療施設に入所・入院している患者・慢性疾患で治療中の人、肺や心臓の慢性疾患のある人や喘息の子どもたち、糖尿病・腎機能障害・免疫抑制剤による治療が必要な人たちなどがあげられます。免疫力の低下が明らかで、インフルエンザやかぜなどによる合併症が予想できる場合には、インフルエンザの予防接種もあれば、肺炎の予防ワクチンも開発されています。ワクチンによる予防は、主治医の判断によりますが、必要との指示があった場合には、受けておきましょう。

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