「インフルエンザ」の治療薬は4種類ある

 インフルエンザウイルスの増殖スピードは驚異的。粘膜にとりついたたった1個のウイルスが100個までに増殖するのに、約8時間かかります。これだけでは、さほど驚異的とも思えませんが、ここからは倍々ゲーム。16時間後には1万個になり、100万個になるのに24時間かかりません。ウイルス数が100万個になると発病すると考えられていますから、たった1個のウイルスを鼻の粘膜に侵入させたばかりに、24時間後には立派なインフルエンザ患者ができあがります。

■外来でもOK! 短時間で診断が可能に
 患者のせきやくしゃみによって空気中に排泄されたウイルスは、免疫のない人を次々と感染させ、大流行をおこします。したがってインフルエンザの流行時に外出すれば、インフルエンザのウイルスの1個と出会うのは必定。残念ながら、どんなに注意していても誰でもインフルエンザにかかってしまう可能性があります。たとえ最大の予防策であるワクチン接種をしていたにしても100%予防することは無理なのです。感染したら、自然に治るのを待つしかないインフルエンザ。だからこそ、重症化を防止することが何よりも重要なのです。以前はインフルエンザに有効な治療法がなく、そしてまた、かぜの一種ととらえられていたために「かかったらおとなしく寝ていなさい」といわれていました。もちろん、体力を消耗させないことは重要ですから、安静にこしたことはありません。しかし、この数年間でインフルエンザという病気の認識が大きく変化しました。それは、予防のワクチンはもちろんのこと、診断と治療という点でも長足の進歩をとげたからです。合併症、重症化の危険性があるインフルエンザですから、何よりも「早く診断して早く適切な治療を受ける」ことが必要になります。今までのインフルエンザの診断方法は、咽頭などからのウイルスの分離をおこなったり、血清で診断する方法でした。しかし、どちらの診断でも1週間近くかかったため、急の患者に対応することができなかったのです。しかし最近では、鼻の粘膜を綿棒にとり、簡単な装置に浸けるという迅速診断キットが実用化されました。これなら約15分で診断できるため、外来で少し待つだけで診断できるようになっています。
■新しく登場した抗ウイルス剤
 インフルエンザはウイルス病なので、市販の風邪薬は効きません。抗生物質も効きません。したがって、頼りになるのは、自分の体の免疫力のみ。でも、それでは免疫が弱い人や弱くなっている人など、待つだけの体力がない人もいます。そこで、現在では4種類の抗ウイルス剤が導入されました。ひとつは「タミフル」。治療薬の中では最もよく知られている抗ウイルス剤です。成人はカプセル、子どもば粉薬で体重によって量が変わってきます。まれに異常行動を伴うことがあることで知られ、若い人ほど出やすく、飲んだら注意深く観察する必要があります。1日2回、5日間内服します。「リレンザ」は、成人、子ども共に1日2回、5mgを5日間吸入します。呼吸器に入っているので、吸入薬が使える5歳以上の子どもが適応になります。口の中に残った薬は消化液で分解されてしまうので、問題はなく、効果もありません。「ラピアクタ」は1回300mgを医療機関でインフルエンザと診断を受けたときに約15分かけて点滴します。小児の場合には点滴量は体重で変わります。1 回だけの点滴投与なので、飲み忘れを防ぎ、安心して治療を受けることができます。「イナビル」は最も新しい治療薬です。自分で吸入して使います。ボトルの下をトントン叩き、中の粉を拡散させ、そのあと「1 」を押して吸入、次に「2 」を押して吸入します。成人と10歳以上の小児は2 ボトル分(40mg)を1 回分として吸い込んでください。10歳未満の子どもは1回分、1ボトルです。1回で終わるので、飲み忘れもなく、服薬の面倒がありません。ただし、タミフル同様、小児の服用後におこる異常行動について完全に否定されてはいないので、投与後2日間くらいは注意して見守る必要があります。操作がちょっと面倒なこともあるので、医師の指導のもと行うようにすると安心です。口の中に薬が残りますが、気持ち悪かったら水とともに飲み込んでください。
■解熱剤には要注意、素人診断は禁物
 インフルエンザで注意すべき合併症に、インフルエンザ脳炎・脳症があります。小児患者に発症が多く、突然意識をなくし、亡くなるケースがあります。また、インフルエンザの小児患者が「アスピリン」を飲むと、脳症をおこす危険があることが指摘されています。これをライ症候群といい、インフルエンザのときには「アスピリン」を使ってはいけないことが常識となっています。リウマチなどで使用する、非ステロイド性の抗炎症剤である「ジクロフェナクナトリウム」と「メフェナム酸」は、脳症をおこしたり悪化させる危険があり、インフルエンザの場合に使ってはいけないと厚生労働省は指示を出しています。このように、今まで解熱剤として使われていた薬のなかに「使ってはいけない」薬がみつかっています。ですから、素人診断で誤った対処をしないよう、早く医師の診断を受け、適切な治療を行うことが重要。ピーク時にはできるだけ人混みに出ないことなども大事ですが、「かかったら、すぐに治療する」ことが原則です。ただし、検査は感染してから24時間たたないとウイルスを確認できないケースが多いので、発熱、悪寒、節々の痛みなどのインフルエンザの症状を確認してから受診しましょう。

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